カスタマージャーニーとは?マップの作り方やメリット、注意点

この記事ではカスタマージャーニーについて解説します。インターネットの普及と日本経済の縮小により消費者の購買行動が大きく変化していく中で、企業や店舗を経営する側もまたマーケティング戦略の抜本的な転換を迫られています。

消費者ニーズの多様化が進む現代の市場環境に対応するには、顧客の購買行動の正確な分析が欠かせません。そのために役立つ手法が「カスタマージャーニー」です。

そこでこの記事ではカスタマージャーニーの定義をはじめ、カスタマージャーニーマップの作り方と活用事例などを幅広く解説。企業や店舗のマーケターにとって見逃せない情報を網羅しています。ぜひ最後までお読みください。

目次

カスタマージャーニーの定義

「カスタマージャーニー(customer journey)」の意味を直訳すると「顧客の旅」ですが、マーケティング用語としては「顧客が商品を購入し消費するまでの道のり」のこと。ここではカスタマージャーニーの具体的な定義とおもな構成要素といった基礎知識から解説いたします。


カスタマージャーニーとは?

カスタマージャーニーとはマーケティング業界の専門用語で、仮想のターゲット顧客(ペルソナ)が特定の商品やサービスの存在を知り、思考や判断を経て購買にいたるまでの行動と感情のプロセスを時系列に沿ってシナリオ化することを意味します。

「カスタマージャーニー」の語源は、「カスタマー(顧客)」の購買活動のプロセスを比喩的に「ジャーニー(旅)」にたとえて、「顧客がほしい商品を見つけて、あれこれ考えた末に購入して消費するまでの旅」としてあらわしたもの。

具体的には、顧客が求める商品やサービスの情報を顧客自身がどこで入手して、どんな思考と体験を経て購入にいたったのかを時系列に沿ってまとめたもので、それを図式化したものを「カスタマージャーニーマップ」と呼びます。

カスタマージャーニーマップを作成する目的は、多様化と複雑化が進む顧客の購買行動を時間軸ごとに整理して「見える化」すること。それにより企業が顧客の行動プロセスを理解して商品やサービスの販売促進に生かすことにあります。

マーケティングの世界では、顧客が商品の存在を知って購入にいたるまでのプロセスを「AIDMA(アイドマ)」と呼びます。「AIDMA」は、「Attention(注意)」「Interest(関心)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の頭文字による略語です。

また「AIDMA」の流れを図式化したものを「ファネル」といいます。カスタマージャーニーマップは、顧客の「認知」→「興味・関心」→「比較・検討」→「購買」という「AIDMA」の流れを図式化したファネル分析の発展形といえるでしょう。

日本経済が成長期を過ぎた現代の成熟市場では、もはや商品の品質や価格だけでは顧客に選んでもらえません。そこで顧客の行動や思考、感情などのファネルを図式化したカスタマージャーニーマップが販売促進に役立つという認識が広がりました。

マーケターが販売戦略を策定する過程で「ペルソナ」の「AIDMA」を分析し、カスタマージャーニーマップを作成して現状課題の解決に生かす手法は、新規顧客の獲得だけでなく、継続して購入してくれる良質なリピーターの育成にも有効です。

カスタマージャーニーマップの主な構成要素

カスタマージャーニーマップとは、前述のようにターゲットとなるペルソナが商品を認知して情報を収集し、購買にいたるまでの各段階から重要な要素を抽出。それを時系列に沿って構成したもの。顧客の行動パターンと考えればよいでしょう。

カスタマージャーニーマップの主な構成要素をあげると、まず企業が顧客に直接対応する「顧客接点(タッチポイント)」。実店舗では店員が顧客接点となりますが、EC主体の現代ではWebサイトのコンテンツやSNSの口コミ、CMなどのチャネルがメインです。

次の段階ではカスタマージャーニーマップの中核となる顧客の「AIDMA」を設定しましょう。具体的には顧客が商品の存在に気づく「注意」や「認知」に始まり、「興味」「情報収集」「比較検討」「購入」などのステップで構成します。

顧客行動は「AIDMA」がカスタマージャーニーマップの主な構成要素となりますが、必要な要素は業種や販売形態によって変わってきます。たとえばECショップでは「Search(検索)」「Share(情報共有)」などの要素も重要です。

このようにそれぞれのニーズや業種業態に合わせて最適な要素を設定し、効果の高いカスタマージャーニーマップを設計しましょう。

カスタマージャーニーマップを作成するメリット

Webマーケティングで近年注目を集めるカスタマージャーニーマップ。顧客の行動や思考をマップによって可視化することで大きなメリットが得られます。そこで本項ではカスタマージャーニーマップを作成するメリットを2つ解説します。

顧客理解が進み、顧客視点で施策を立案できるようになる

カスタマージャーニーマップを作成するメリットの1つ目は、顧客の行動と心理を把握することで企業が顧客視点に立った施策を立案できるようになること。スマホとネットの普及によって顧客が商品を認知するチャネルは急速に多様化しています。

しかしながら企業や店舗の経営において変化の激しい消費者行動にマッチした戦略を立案するのは容易なことではありません。そこで顧客視点を理解する手段としてカスタマージャーニーマップを導入すれば、顧客の購買プロセスを擬似的に追体験できるようになります。

 ペルソナの行動分析によって顧客視点のマーケティングと、トレンドを踏まえた販売促進戦略が可能になること。それがカスタマージャーニーマップを作成する重要なメリットの1つ目です。

意思決定のスピードを早められる

カスタマージャーニーマップを作成する2番目のメリットは、顧客視点のマーケティング戦略を策定する際に意思決定のスピードを早められること。顧客データを図式化したジャーニーマップは直感的に理解しやすく、社内の情報共有も容易にできる特徴があります。

組織や社内で情報共有できれば、重要な戦略会議の際も事前のすり合わせは不要。さらにマップが意思決定の土台になるため施策の運用もスムーズになります。課題やトラブルに対処する際も担当者間で顧客のイメージを共有できれば的確な対処が迅速に可能です。

カスタマージャーニーマップの主な種類

カスタマージャーニーマップの種類は企業の業種や業態、提供する商品やサービスの特性はもちろん、想定するペルソナによってもちがってきます。そこで本項では代表的な3つのマップ形式を解説していきます。

タイムライン型

「タイムライン」とは、事物の変化を年表のように時系列に沿って表示したもの。Twitterではユーザーがフォローするアカウントのつぶやきを時系列順でホーム画面に表示する機能をいいます。

タイムライン型のカスタマージャーニーマップは、ペルソナの購買活動を時系列に沿って記載したシンプルな年表形式のマップです。時間軸は左からスタートして右に進む横軸型が一般的ですが、上下方向に図式化することもあります。

タイムライン型は、ペルソナのAIDMAや心理の経過を一連のストーリーとしてシンプルに図式化できるため、直感的に理解しやすいメリットがあります。

サークル型

サークル型は文字通り円形のマップのこと。ホイール型とも呼ばれます。サークル型では最後のフェーズが終わると最初に戻るため、ペルソナの行動パターンがリピートするケースや、PDCAサイクルを回すような事例に適したマップになります。

サークル型の基本は、円の中心部にペルソナの人物像を記載して周囲を円グラフのように分割。それぞれに「認知」「情報収集」「比較」「検討」「購入」などのフェーズを記入し、その外周にタッチポイントごとに起きるイベントなどを記載します。

スペース型

「スペース」とは、「空き」「空間」の意味ですが、スペース型のカスタマージャーニーマップはペルソナの行動推移を「区域」に分けて表現すること。顧客行動を文字通りマップ(地図)として図示する形式をいいます。

たとえばペルソナの顧客行動に地理的な移動がともなう場合や、タッチポイントの所在地が分かれる場合などは、その移動経路も含めて場所ごとに俯瞰的な地図を作成すると、各場所の顧客行動を全体的な流れを一目で把握できるメリットがあります。

スペース型のデメリットは、高精度なマップを作成するとサイズが大きくなってしまうこと。図面を簡略化したり3D化するなどの工夫が必要になりますが、顧客体験(ユーザーエクスペリエンス)を効果的にビジュアライズすることが可能です。

カスタマージャーニーマップの作り方

ここからはカスタマージャーニーマップの作成方法を4つのステップに分けて解説します。

STEP1:ペルソナを明確に定める

カスタマージャーニーマップは、ペルソナの購買行動を図式化したもの。正確なマップを作るにはペルソナを明確に定める必要があります。マーケティング戦略で想定するペルソナは「既婚男性」のように漠然としたイメージではなく、個人の具体的な人物像です。

ペルソナはあくまで仮定の存在ですが、属性データは現実の顧客を参考に、あたかも実在するかのような詳しいパーソナリティ(人格)を設定します。年齢や性別・職業・年収・居住地・趣味・家族構成などの要素をできるだけ詳細に設定しましょう。

ペルソナの設定はまず最初に仮説を立ててそれを現実のデータで検証するという手順で行います。検証に必要な属性データが不足する場合は実在の顧客をいくつかのグループに分けてアンケート調査やヒアリングを行い、そのデータをもとに仮説とのギャップを調整します。

STEP2:カスタマージャーニーマップのゴールとフレームを決める

ペルソナが明確になったら、次のステップに進んでマップのゴールとフレームを決めましょう。カスタマージャーニーマップのゴールとは企業がペルソナに望む最終的な行動のこと。商品の購入や消費、使った感想を口コミで発信する情報拡散などが一般的なゴールです。

次の段階では時系列に沿って縦軸と横軸のフレームを決めましょう。表計算ソフトの要領でマップの横軸に「商品の認知」「興味」「比較検討」「購入」などを時間軸に沿ってマッピングします。項目は前述したAIDMA(アイドマ)が基本です。

カスタマージャーニーマップの縦軸については、縦軸とは異なるフェーズで「タッチポイント」「行動」「思考」「感情」「課題」「施策」など、それぞれの業種・業態やニーズに合った項目を設定します。

STEP3:顧客の詳細なデータを集める

マップのフレームが完成したら、次は空欄を埋めるデータを収集します。具体的にはオンラインのアクセス解析やオフラインのアンケートから顧客の購入履歴やカスタマーサポートの対応履歴、顧客の思考や行動などの詳細なデータを抽出します。

データが足りなければ、適切な顧客を選んでインタビューやモニタリングなどの定性調査を行い、幅広い観点から顧客情報を収集して分析するようにしましょう。

STEP4:マッピングをラフに始める

最終ステップはもちろんマップの作成です。STEP2で設定したフレームワークにSTEP3の情報を記入すれば完成します。ただし最初から詳細なマップを作成しようとする必要はありません。

カスタマージャーニーマップをゼロから作成するのは簡単ではありません。最初はラフな仮組みから始めましょう。それをもとに複数のメンバーで議論して課題を洗い出し、修正すべき点は付箋に書き写してマップに貼ってみましょう。

付箋をもとに図式の改良やデータの修正を重ねながら、最終的に誰でもわかりやすく顧客行動を俯瞰できるマップを作成します。最初から詳細なマップを作ろうとすると情報過多になったり、プロセスが迷路のように複雑になったりしがちになります。

カスタマージャーニーマップは顧客の購買行動を俯瞰して理解するためのツールですが、マップの作成過程で現状の戦略における課題や改善点を発見できれば、その場でアイデアを出し合って解決することも可能です。

カスタマージャーニーマップ作成時の注意点

カスタマージャーニーマップは、顧客視点のマーケティング施策に役立つツールのひとつ。ここでは効果的なマップを作成するために重要な注意点について解説します。

ファクトを必ず盛り込む

企業が顧客視点のマーケティング戦略を立案することは意外と難しい作業です。カスタマージャーニーマップを作成する際は詳細な顧客調査を行い、ファクトベースの情報を盛り込むこと。情報が事実かどうかを調べるファクトチェックは欠かさず実施しましょう。

カスタマージャーニーマップに正しい情報が盛り込まれないと、顧客視点で作成すべきマップに企業担当者の願望が反映されるおそれがあります。経営戦略にも狂いが生じますので、根拠のないデータや予測は徹底して排除するように心がけましょう。

最初から細かく作り込み過ぎない

マップ作成のような事務作業はまじめで几帳面な人ほど細部にこだわりすぎる傾向があります。カスタマージャーニーマップは複雑なデータをシンプルで分かりやすく表現することが重要です。STEP4で「ラフに始める」と解説したのもそのためです。

最初から細かく作り込もうとすると手間がかかる上に情報過多で理解しにくいマップになったり、ポイントを絞れなくなって無駄や矛盾が生じたりします。カスタマージャーニーマップはシンプルイズベスト。まずは大まかな全体像を作ることから始めましょう。

またシンプルでわかりやすいカスタマージャーニーマップはバージョンアップも容易です。現代のように変化の激しい社会環境では、顧客の購買行動や思考も激しく移り変わります。

カスタマージャーニーマップも作ればそれで終わりではありません。時流や状況の変化に応じて、いつでもすばやく直感的にバージョンアップできる体制を整えておくことも重要です。

カスタマージャーニー分析に役立つツール7選

カスタマージャーニーマップを作成するためは、日々複雑化する顧客の行動や心理をリアルタイムに分析する必要があります。そこでここではカスタマージャーニー分析に役立つ便利なツールを7つ厳選して紹介いたします。

KARTE(カルテ)/株式会社プレイド

「KARTE」は株式会社プレイドが開発運営しているCX(顧客体験)プラットフォームです。Webサイトの訪問者やアプリ利用者の行動や思考、感情をリアルタイムに解析。顧客1人ひとりの状況に合わせたコミュニケーションを実行してCXの価値を高めます。

KARTEの利用料金は目的や課題に合わせて柔軟に設定することができます。詳しい内容は直接お問い合わせください。

アドエビス/株式会社イルグルム

「アドエビス」は株式会社イルグルムが提供するWebマーケティング用の効果測定プラットフォームです。多様な流入チャネルのデータを一気通貫して取得分析。全ての流入チャネルのデータを一元化できるので、Webマーケティング施策全体を統合管理することも可能になります。

アドエビスの料金は月間クリック数とPV数によってライト・スタンダード・個別見積もりの3プランを設定。いずれも初期費用は無料です。

WebAntenna(ウェブアンテナ)/株式会社デジタルアイデンティティ

「WebAntenna」は、株式会社デジタルアイデンティティが提供する広告効果測定ツールです。バナーやリスティングなどの各種広告の正確な貢献度を簡単に評価。自然検索の効果も同じ指標で評価できるので、正確な費用対効果が素早く詳細に把握できます。

WebAntennaの料金は月額2万円から。金額はクリック数に応じて変わります。初期費用は無料です。

Robee(ロビー)/株式会社Macbee Planet

株式会社Macbee Planetが提供する「Robee」はサブスクリプションサービスや定期通販ビジネスのLTVを最大化させるソリューションです。既存顧客の解約理由を分析してCVQ重視の施策を設計。高エンゲージメントの顧客をWeb接客で獲得します。

Robeeの料金はWeb接客サービスが月額5万円から。解約防止サービスの詳細な料金についてはお問い合わせ下さい。

CODE Marketing Cloud(コードマーケティングクラウド)/株式会社エフ・コード

「CODE Marketing Cloud」は株式会社エフ・コードが提供する高機能のWeb接客ツールです。ユーザーの利用端末をはじめ、サイト訪問回数やサイト内遷移、滞在時間や訪問タイミングなどの行動データをもとに精度の高いWeb接客を実現できます。

CODE Marketing Cloudの利用料金については個別に見積もりしています。資料をダウンロードの上、ご確認ください。

nununi(ヌヌニ)/awoo Japan株式会社

awoo Japan株式会社が提供する「nununi」は最新のAI(人工知能)テクノロジーで顧客のマイクロニーズを捉えてSEOとCXを最適化するマーケティングソリューションです。高精度なAIでタグを生成。Web上での「衝動買い」体験をサポートします。

nununiの料金はECサイトの利用状況によって異なります。

KaiU(カイユウ)/コンバージョンテクノロジー株式会社

「KaiU」はコンバージョンテクノロジー株式会社が提供する完全運用代行型のWeb接客ツールです。専任のコンサルタントがクライアントと顧客の課題を分析して最適なシナリオを設計。コンバージョン率とサイト回遊率を向上させます。

KaiUの料金は初期費用が税込11万円。月額費用が税込55,000円となっています。

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