経理や会計の人材を採用する際、どのようなポイントに注目すればいいでしょうか?
この記事では、経理人材を採用するうえで抑えておくべきポイントや、経理に向いている人材について紹介。合わせて、経理人材のスキルをチェックする項目についても解説します。
企業経営の重要な役割を担う経理・会計人材を採用する際のチェックポイントを見ていきましょう。
経理・会計部門に向いている人材は?
経理は会社のお金を管理する重要な仕事です。
お金を扱う仕事なので数字に強いこと、会計知識を持っていることが求められます。
事務仕事の多い経理担当者ですが、他部門と連携することも多いため説明能力やコミュニケーション能力も必要とされます。
専門知識(会計・法律)がある
経理の仕事は会計や法律などの専門知識が必要となる仕事であり、専門知識を有した人材が適しています。
特に、中途採用など即戦力人材を求める際には資格や実務経験があるかどうかを重視しましょう。
専門知識を持っているかどうかを測るためには相応の実務経験があること、会計に関する資格を持っていることが評価基準となります。
コミュニケーション能力・説明能力がある
経理の仕事は事務作業が多く事務処理能力が重要と思われがちですが、それ以上に重要なのが説明能力やコミュニケーション能力です。
経理の数値を確定する際には、現場とコミュニケーションをとって必要な資料を用意しなければなりません。そのため、必要な情報をやりとりするためのコミュニケーション能力が求められます。
また、決算などの場面で会計的な根拠を求められることが多いです。数値的根拠を問われた場合の説明能力が高い人材であることが重要です。
キャリアビジョンがある
一人前の経理パーソンとなるためにはキャリアビジョンが明確であることが求められます。
自身の強みを把握して中長期的なキャリアビジョンを持っていることで将来的に企業経営の中核となる人材への成長を期待できるのです。
経理会計の採用でチェックするべきポイント
経理会計の人材を採用する際に注目したいのがスキル面と人柄です。
スキル面をチェックする際は専門知識や実務経験のほかにマネジメント経験、コミュニケーション能力や協調性なども重視しましょう。
ビジネススキルだけでなく採用した人材が企業理念に合うのか、相性の面も確認しておくといいでしょう。
資格・ビジネススキル
会計に関する資格を持っているかどうかを重視しましょう。
資格を保有していることは専門知識を有しているかという客観的な判断材料です。
公認会計士や税理士といった国家資格のほかに日商簿記(1級・2級)といった専門資格を保有していることが評価基準となります。
マネジメント経験
経理・会計の人材を採用する際には業務経験やマネジメント経験をチェックしましょう。
特に、30代以上の中途採用をする場合はマネジメント経験を重視したいです。
自分のことだけでなくチームをまとめられる人、部下に指導ができる人といった経験が役に立ちます。
将来のリーダー候補となる優秀な人材を確保するために、マネジメント経験をチェックしておきましょう。
企業理念・価値観が合うかどうか
企業理念は企業経営の根幹となる考え方です。
人材を採用する際には企業理念と共感できるか、すなわち同じ価値観を持っていることが重要です。
いくら優秀な人材であっても企業理念に共感できなければミスマッチが発生してしまいます。会社に溶け込むためには企業理念あるいは価値観をチェックして、その人の考え方を確認しておくといいでしょう。
経理人材のスキル指標
経理人材の具体的なスキルを測るとき、以下の指標をチェックしましょう。
分野 | 資産分野 | 決算分野 | 税務分野 | 資金分野 |
業務内容 | 売掛債権管理 買掛債務管理 在庫管理 固定資産管理 ソフトウェア管理 | 月次業績管理 単体決算業務 連結決算業務 外部開示業務 | 税効果計算業務 消費税申告業務 法人税申告業務 連結納税申告業務 税務調査対応 | 現金出納管理 手形管理 有価証券管理 債務保証管理 貸付金管理 借入金管理 社債管理 デリバティブ取引管理 外貨建取引管理 資金管理 |
これらの業務は経済産業省が公表している「経理・財務サービス・スキルスタンダード」に標準された業務として指定されています。
(出典:「経理・財務サービス・スキルスタンダード」)
資産管理
資産管理は企業が保有する資産および負債の残高をチェックする業務です。
具体的には売掛債権の管理、買掛債務の管理などが挙げられます。債権や債務を適切にチェックしておくことで、企業の資産状況と損益状況のバランスを保てるのです。
資産や負債を適切な状態に管理することで、損益を適切な状態に保つことが経理担当者としての役割です。
決算
決算業務は会計年度の経営成績や財務状態を表す作業です。
決算は1年間の企業活動を確定するものであり、企業の利害関係者向けに適切な財務状態を報告することを目的とします。
適切な決算を遂行するためには高度かつ広範な会計知識・経理業務の経験が必要です。
また、連結会社がある場合には連結会計の知識や経験も求められます。
税務
税金を適切に計算することも経理の役割です。
税金が正しく計算されていること、取引の根拠となる資料(契約書など)を適切に管理しなければなりません。
確定申告を行って税理士や税務署と橋渡しを行うことも税務の一環です。
また、税務調査を行う際に対応を行う必要があります。
資金
資金や現金(キャッシュ)は企業経営にとって欠かせないものです。現金収支の動きを管理することをキャッシュフロー管理といいます。
企業に十分な資金を確保することも経理部の務めです。キャッシュフローを適切に管理することで、企業の財務状態を健全な状態にできます。
採用した人材の給与を決める方法
採用した人材の給与はどのように決めればいいでしょうか?
給与は高すぎると企業経営を圧迫する恐れがありますが、給与が低いと優秀な人材を雇うことができないほか従業員のモチベーション低下を招きます。
業界や業種の相場を把握して、相場と大きく離れないように給与を決めるという方法が一般的です。
また、給料だけでなく福利厚生のかたちで従業員に還元する方法もあります。
業界・業種の相場を把握する
給料を決める場合は業界および業種の相場を把握し、それに近い金額を決定しましょう。
相場を調査する場合は政府や民間機関がまとめた統計を参考にするといいでしょう。
「e-Stat」では賃金構造基本統計調査など、政府が取りまとめた賃金に関する統計を見られます。
外部リンク:https://www.e-stat.go.jp/
社会保険料
従業員の社会保険料は企業と半分ずつ負担する必要があります。
社会保険料は以下の数式で算出されます。
<社会保険料の算出法>
社会保険料=従業員の報酬月額×保険料率
従業員を雇うコストを考える際は、社会保険料の負担まで考慮に入れましょう。
残業代の考慮
従業員の給料を決める場合は基本給だけでなく残業代まで考慮に入れましょう。
特に繁忙期になると残業の発生が避けられないため、残業代を含めて人件費として考えておく必要があります。
残業の発生が見込まれる場合には「見なし残業代」として、あらかじめ給料の中に含めるというケースもあります。
昇給・減給の制度を定める
従業員には昇給や減給のチャンスがあります。あらかじめ昇給や減給の評価基準を定めておくことで、従業員のモチベーションを高められるでしょう。
給与以外にも福利厚生で還元する、ストックオプション制度を利用するという手段があります。ストックオプション制度とは会社があらかじめ定められた価格で自社の株式を購入できる権利です。
従業員にストックオプションを付与するのはベンチャー企業でよく見られるケースで、企業価値の向上が従業員のモチベーションに繋がる施策となっています。
まとめ
経理・会計人材を採用するうえでチェックしておきたいポイントを見ていきました。
経理・会計担当者は会計の専門知識だけでなく、社内外と適切なコミュニケーションをとれる能力が求められます。
自社で活躍できる人材であるかどうかを見極めるためにはスキル面やマネジメント経験のほかに、自社の企業理念に共感できるかどうかをチェックしておくといいでしょう。
執筆者プロフィール
岩橋慧(いわはし さとる)
慶應義塾大学商学部卒業後、一部上場企業の経理部門に従事。決算管理、残高管理などを担当する。フリーライターに転身後、経理実務経験や会計知識を活かしたSEOライティングに従事。主にオウンドメディアの記事制作に携わる。